夫婦ごっこ
早く帰宅したい俺に ひさしぶりに上司から酒の誘い。
前回の契約をぽしゃってから
風当たりが強かったけれど 今回の大口の契約の成功で
また少しづつ波に乗ってきていた。

紅波のことで中傷や噂も立てられたけれど
最近はその話しで
嫌味を言われることもなぜかなくなっていた。

昔はおしゃべりチャラ男だった俺だけど
人の目を気にする自分がイヤで
社会人になったら絶対自分ペースで行きたいって
思っていたから まわりとコミュニケーションを
とることもせず だからよく思わないヤツからああいう
仕打ちを受けてしまう。


つくづく人間ってめんどくさいなって思う。
ただ最近 紅波との距離が縮まって他人がそばにいる生活って
そんなに悪くないと思うようになっていた。

っていうことは
それまで俺は紅波に対しても対等な扱いをしていなかった。
それが 申し訳なく思っていた。

『上司から酒に誘われた。ご飯作ってくれてたんだろ。
ごめんな。明日の朝いただくから 先に寝てろよ。』

『了解~~頑張ってね~』
紅波からはすぐに返信が返って来た。


「今回の契約 よくとったな。」

「前回ぽしゃって迷惑かけたから
死に物狂いでした。」

「評価高かったぞ。下のやつらも今回は主任の
考えてることしたいことがよく理解できたって。
けっこう周り大事にしたんだってな。」

「いろいろあったので…俺も悪いとこあったし…
直さなきゃなって……ホント人間って怖いです。」

「あんまりチャーミングな若妻もらうから嫉妬されたんだ。」

上司が笑った。

「ところでおくさんどうだい?」

「おかげさまで元気になりました。」


上司にビールを注いだ。
< 323 / 346 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop