夫婦ごっこ
つわりで入院をして……
やっと安定期に入って 胎動を感じて

私は毎日幸せだった。

これで一人前の 恒くんの奥さんになれるって。

マタニティって最近の若い人はあんまり着ないんだけど
恒くんが あれもこれもって買ってくれるから
すっかり妊婦さんな私。


「主任~~。」

大型スーパーで散歩兼ねて歩いていると
恒くんの部下に声をかけられた。


奥さんと一緒だった。

「大浦主任の奥さまですか?
いつも主人がお世話になっております。」

あの頃の私のように ぎこちない挨拶


「家内です。
お世話になっております。」


挨拶もけっこういたについてきた。


今度の人事で恒くんは 係長に異例の速さで昇進する。

来年あたりは出世のために
転勤もありそうだって言ってたけど
恒くんとならどこにいっても 幸せ……。


子どもは小さいうちならどこでもついて行こう。

そしていろんな風景を二人で見るんだ。
二人の家族をたくさんに増やして
私たちは親になって……長い年月を愛する家族のために
注いでいくの。


そして子どもたちが独立して
老人になっても どっちかがこの世からいなくなるまで
こうやって手を繋いで歩くんだ。
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