夫婦ごっこ
昼からはエステに出かけた。
お天気がよくて私はウキウキしていた。
きのう 恒くんが優しくて…テンション高い自分がいる。

「やばいっしょ…。私…ダメダメ…。」
自分に言い聞かせる。

まさかこんなに早く契約違反をするとは夢にも
思ってなかったから……
違う違う……好きとかそんな……きっと勘違いなんだよ。

今 恒くんしかいないから
きっと私 恒くんワールドにはまってるだけ……。
恒くんだけしか今 私の世界にいないから……


そうそうきっと…きっとそうなんだ。

「大浦さま 挙式までもう少しですね。」
エスティシャンの伊藤さんが言った。

「ほんとだ・・・。緊張しちゃうな。」

「若くて愛らしくて素敵な花嫁さんになりますから
堂々としていらしてくださいね。」

「ほんとですか?そう言われて…安心しました。」

「その日は 世界で一番キレイな
女の子になるんですよ。
ご主人のために……それから育ててくれた親御さんのために…。」


  親御さん……か…。

私にとってはどうでもいい人達だけど…
この人たちの手前だけでも私は最高に幸せな
花嫁を演じたい……。

私を愛してくれなかった家族……


ここでは恒くんに愛されてる幸せな女の子を
上手く演じるんだ……。
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