夫婦ごっこ

両親と妹を空港に迎えに出る。
車の中で私は　どんよりしていた。

「どうした？」恒くんが聞いた。

「気が重い。大嫌いな人間に会うんだって思うと……。
一番会いたくない人達の前でどんな顔したらいいのか…。」

「バカだな。そう言う時はニッコリ微笑むんだ。
そして私は幸せですからってそう思わせてやればいいさ。
一世一代の復讐のためにも頑張って演技しろ。
俺も合わせるからさ。紅波の両親の前では　雇われてやる。」


運転する横顔が優しい。


　　キュン…


　　ダメダメダメ～～～～～

「ありがと。うん　いっぱい演技するから…お願いします。」

声を押し殺したのは　あんまり嬉しそうな声を出すのが
恥ずかしかったから……。


両親と桃音が近づいてきた。

桃音はちょっと見ない間にとても美しく成長してた。

「恒くん　いつもお世話になって……。」
母親が母親らしい挨拶をした。

私は背筋が寒くなる。

「うちの娘はちゃんと奥さんしてます？」

意地悪くさい目線を私に投げかけた。


「はい　可愛くて愛らしくて…社宅でも有名な幼妻です。
家事もしっかりやってくれるし…最高ですね。」

歯がうくような台詞に

　　言い過ぎでしょ…

と言いたくなったけどくすぐったい。