夫婦ごっこ
「そろそろ戻っていいぞ。」

多分大学の友人たちとの話の中で私に知られたくない話が
あるんだと察した。
私たちは愛し合ってるわけじゃないし
別に深く恒くんのことを知ったところで無駄なだけ。

そうは思うけど…興味があった。

  昔の女……。

「紅波 タクシーつかまえてやる。」

恒くんが立ち上がったから
もう一度お礼を言って店を出る。

「先に寝てろよ。」

「わかった。」

運転手に行き先を告げてドアが閉まるまえに
店に戻って行った。


  イタッ……

心がズキンとした。


そんなことあたりまえなのに…傷つくことでもないのに
新婚初夜のカップルが一人でもどる
スイートルーム……。

さっき慌てて置いた荷物が散乱していた。


結婚式では主役だったのに…それからはひどい
扱いだったよな~~と苦笑した。


恒くんの昔の女……。


あの中には……いないよね……。
千鶴さんと前さんはもうアツアツだし……
あの人たちではないし……


今日の中にはいないんだ


少しホッとしてる自分がいた。
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