夫婦ごっこ
春が来て…木々が葉をたくわえ始めた。

「バルコニーの花の芽がでたんだよ。」

主任になって忙しくなった恒くんに話しかけても
適当に流されて……部屋に行ってしまう。

　
　　つまんないな……。

ひどい時は　誰とも話さなで一日が終わってしまう。

日曜日も仕事があるって家にいない時も増えた。
バルコニーの花が美しく咲きだしてそれが幸せだった。

「千鶴～～今日はどっか走りにいくか～。
豊平川にでも自転車持って行くか？」

前さんの声に

「うん。今日はいい天気だし　おにぎり作るわ。
上流まで行ってみよう。」

明るい千鶴さんの声。

函館から戻って来た時の千鶴さんはすごく
やつれていたけど　前さんの愛は深い……。
千鶴さんはどんどん元気になってきて
美しい笑顔を振りまいていた。

「元気になりましたね。」

買い物帰りの駐車場で会った千鶴さんに声をかけた。

「ええ……。悲しんでるとともちんがイヤがるの。
しつこいギャグを挑んでくるから…もうこっちも必死～。」

そう言うと幸せそうに笑った。


「いいな～～前さんは～～
毎日楽しいでしょう？」

「そうね。笑わないことはないわね。
もうちょっと仕事頑張ってほしいんだけど……
大浦主任に迷惑かけてるんじゃないかしら…。」

千鶴さんは不安そうだった。
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