男子校の七不思議?【BL】

「……誰か、いるのか?」

先生が声をかけながらトイレへと入っていった。
そして物音から察するにすべての個室を見回ってすぐに戻ってきた。
首を振りながらだから、きっと誰も居なかったのだろう。


「お前ら、今日は後ろに気をつけろよ」

やっぱりニヤリと笑いながら言う先生。
……俺たちは浴場に入る事を諦めた。
幸い、各自個室にシャワーはあるので、それで十分だろう。

ゆったりと風呂に浸かるよりも何よりも、俺たちは早くここから去りたくて仕方がなかった。

その理由は全員が全員、先生の話を信じきって狙われる事に怯えている訳じゃない。
けれど、戻ってきた先生の足の間から、人間の手が見えていたのだ。

その指先は足の付け根辺りを掴んでいたり、撫ぜているようにも見えた。
手以外の部分は、先生の体で遮られどうなっているのか見えない。
確かめたいとも思わず、俺たちは顔を見合わせ、そそくさと大浴場を後にした。


「なんだー?お前らビビりだな」

先生のそんな言葉なんて、気にする余裕は誰にも無かっただろう。

せせら笑ったまま俺たちを見送る先生が真実を知るのは、数日後、千秋の書いた記事の載る学校新聞での事だった。
恐らくそうなのだと信じたい。

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