男子校の七不思議?【BL】
それは寝起きや、食事中に多かった。
ふとした瞬間に、どこからか見られている気がしたんだ。
樫本が見ているのかとも思ったけれど、
視線はいつも、コイツとは逆方向からだった。
別にそれ位なら気のせいだと思っていたけれど、日が経つにつれ、視線だけでは無くなったんだ。
久芝先輩はそう話し、そこで1度口を止めた。
言い難そうに、ではなく、ただ単に雰囲気を盛り上げる為だと思われる。
「生ぬるい風が、吹いてきたんだ」
それはまるで人の体温のような温かさだったと言う。
「それから数日もしない内に、
俺は金縛りに遭うようになったんだ。
身動き取れないし、息苦しいし、
樫本に助けを求めようとしたけど、声も出なかった!」
先輩がテーブルを叩いて、ガチャ、とカップが揺れる。
並々に注がれていた中身が、その振動で少し零れてしまった。
慌てた樫本先輩がティッシュを差し出してくれ、各自カップ周りを拭いていると、久芝先輩が呟いた。
「……俺の、空だ……」
その言葉に、向かい側を見てみれば、確かに何も零れていない。
「さっき飲んだからだろ?」
樫本先輩が呆れたように言うと、噛みつくように久芝先輩が言い返す。
「1口しか飲んでない!熱かったから!
……やっぱりいるんだ。
アイツが飲んだんだよ!幽霊はいる!」
再びヒートアップして、ダンッとテーブルが揺らされる。
「とにかく叩くな!」
樫本先輩に叱られ、久芝先輩は少し大人しくなった。