男子校の七不思議?【BL】
紹介を受けた後は、大原はひたすらに恋人の容姿や性格を褒めちぎり俺に惚気る。
それに対し、鏡の向こうの彼も照れたように何かを言うが、その声はこちらには届かない。
しかし大原と彼は、どうやら会話が出来ているようだ。
「最初は筆談しか出来なかったんだけど、最近は唇の動きを読めるようになったんだ」
愛の力って凄いだろ、と大原は微笑む。
そして指先を鏡に映る恋人に伸ばし、その頬を撫でる。
鏡には大原の手がもう1つ映り、触れているのは恋人ではなく、自分自身の手にしか見えない。
触れる事すら出来ないのだ。
俺の視線に気が付いたのか、2人は困ったように笑う。
「これがもっぱらの悩みなんだよ」
鏡の向こうの彼も、うんうんと頷いている。
それから小一時間、俺は特に会話に参加する事も無く、同意を求められた時に返す程度だ。
ひとしきり話し終わったのか、そろそろ帰るか、と名残惜しそうに大原は言った。
古びたカーテンの隙間から差し込むのは、赤みを帯びた西日。
時刻は向こうも同じらしく、彼はドアの向こうを気にしている。
「じゃあ、また明日」
大原はそう言って、一歩鏡に近づいた。
それは一瞬の事だったから、彼の唇の先にあったものが彼自身の姿なのか、それとも恋人のものなのかは解らなかった。
けれど鏡に見える2人の姿はとても、幸せそうだ。