ずっーと前から。【完結】
病室のドアを開けると嬉しそうに赤ん坊を抱いている光。
「あ、聖矢」優しい声で俺の名前を呟く。
「早く行けよ!」入り口前で立ち止まっている俺を後ろから押してくる悟史。
「いや、無理!!」
「何が無理なんだよ。早く入らないと後ろ詰まってるんですけどー」
「まじ無理!!まじ泣きそう」手でドアに掴まって進まないように制御する。
「聖矢!早くおいでよ」クスっと笑う光。
「聖矢!みっともないんだからさっさと入りなさい!」母親が怒鳴ってくる。
「分かった!!分かったから頼むから押すな、悟史!」
「へいへーい」胸に手を当てて深呼吸。
「お前まじで世界一の男?」耀太が偉そうに言ってくる。
「うるせーよ」俺は一歩、一歩前へ進んだ。