だって雛祭りだったから



「お茶、入りました」



がちゃりと乾いた扉の音がして、レインが陶器のティーカップとポットをワゴンに乗せてやってきた。



翡翠色が三つ。


綺麗が過ぎる色はなんだか和む気がしてならず、レインが配る前にアルファはカップを攫い、口をつけた。



「んー、やっぱ日本茶はいいね!」



「立ったまま飲むな、行儀が悪い」


「はいはい」



来客用テーブルに玉露茶と桜餅を並べ、洋室ながらにそれらしい雰囲気がなる。



「いっただっきまーす」


「お前さっき一個食ったろ」



ジンが呆れながら桜餅に手を伸ばした。


アルファが言った通り、葉っぱの部分も味がする。



「ふーん…」


「美味しいでしょう!
ジャッポネーゼ文化万歳です」


「……そうですね」



レインも同じく桜餅をかじる。


普段拝めない柔らかな表情をしてレインは女の子らしい雰囲気をしていた。



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