だって雛祭りだったから
「アル煩い。
レインも、飾ってるだけなら放っておけよ」
やっと顔を上げるこの場の長。
相も変わらず眉間に皺を寄せ、不機嫌さを加減しない。
「しかし主、この部屋に人形など置く場所なんてありませんよ。
今だって」
レインの視線は未処理のままに放置された人形の下の書類。
紙と本だらけの書斎には、装飾品など置くスペースはない。
「…………」
人形よりもまずその書類の山を睨み、ジンは深くため息をついた。
「雛祭りなんて異国の祭りを祝うお前の気が知れない」
「ジンくんまでっ!
いーじゃないですか、日本の祭りには参加するに意義があるんですよ!」
「ここは日本じゃない」
揃いに揃って同じ文句をほざく。
じゃあ片付けようという趣旨になり、レインは再び人形に手を伸ばした。