だって雛祭りだったから
「君はずいぶん成長しました。
年上の僕より知識を身につけ、学を得、地位を築き、今やアイヴァンスは騎士団員から一目置かれる存在です。
剣術も強く魔術にも長ける。
僕が見てなくても十分なくらいに育ってしまわれましたねー」
「なに爺みたいなこと言ってんだお前は。
俺の親か」
「なんなら兄さんと呼んでくれても」
「断る」
「うー…」
桜餅をひとつ摘んで口へと運ぶ。
甘くてしょっぱい独特の味が口内を支配し、追憶をより促した。
「…君は成長しすぎて、なんだかもう乾いてしまったみたいで。
青年特有の熱意とかにまったく無縁ですよね」
「まあな」
「…そしてそれは、きっと彼女に対してもそうなんでしょうね」
「…何が言いたい」