だって雛祭りだったから
少し低めの声で。
ジンはアルファを睨む。
――…ちっとも怖くはないんだ、本気で殺しあった過去があるから喧嘩なんて怖くない。
ただ信頼と忠誠を盲目的に交わす二人だからこそ、アルファが横槍を入れることができる。
「君は、きっと彼女のピンチでも仕事中なら任務を優先するんでしょう」
「突然。
それが俺の役割だ」
「だからこそ」
早めに気付かせてやらなくてはならない。
好き合って甘いだけの関係なら、きっとこいつは長持ちしない。
絶望に陥ったその時、誰が混沌の中で彼女の腕を取るだろう。
「だからこそ、厄除け人形飾っといてください」
「はあ?なんでそうなる」
「少しでもレインに厄が襲わないようにですよ!」
自分はきっと、救ってやれない。
誰が?
そんな第三者が現れることなんて期待しない、否、したくない。
彼女が隣を歩くのは、どう頑張ってもこいつしかいない。