だって雛祭りだったから
「この人形は、女の子の代わりに病気や怪我を負ってくれる身代わり人形なんです。
少しでもレインが安全に暮らせますようにぃぃぃ」
「拝むな」
老成したジンは賢明で論理的だ。
隊長らしい判断や対応は求められる以上に能力が高い。
それがジンのダメなところだ。
論理がいかに非人間的か、それを思い知るにはあまりにも残酷が過ぎるから。
――…その絶望が大きかろうと、少しでも雛人形が彼女の代わりになればいい。
兄さんはね、心配なんだよ。
もちろん心中で呟いた。
口に出したら殺される。
妙に仕上がりが良すぎる間柄こそ子供の飯事に見えるもの。
それは――飽く迄、理想に過ぎないことをわかっていようか。