君の声
居てくれるだけで
僕が彼女を見つけたのは去年の冬―
都会の人込みの中で、ひとり何かに怯えていた。
その姿は異様なまでだった。
誰もが不思議そうにチラッと見るだけで通り過ぎて行ったが、僕はなぜか立ち止まった。
「…あの」
「!!」
声をかけると、彼女は驚いて逃げた。
…僕は追いかけた。
どうしてこんなことをしたのか、自分でもわからなかった…
季節は変わり、蝉が声をあげだした。
彼女は今、僕の家に居る。
あの日、彼女を探し出せたのは深夜だった。
凍えるような北風が吹く中、小さな路の、ゴミ箱の横にうずくまっていた。
…眠っているのか、動かなかった。
僕は彼女をコートで覆った。
すると彼女は気がつき、また逃げようと立ち上がったけれど、彼女はフラフラしていた。
僕は彼女を捕まえた。
心も体もボロボロだった彼女は、それ以上は逃げられなかった。
僕は、彼女をうちに連れて帰った。
…なんだか、放っておけなかった。