君の声
「サチ!」
サチはあの日のように、ゴミ箱の横でうずくまっていた。
見上げた顔は涙でボロボロになっていた。
「帰ろう」
サチは首を振った。
「どうして…?」
ひたすら首を振った。
「…それ、何?」
サチは紙袋を手に握っていた。
そっと取って中を見てみると、風邪薬が入っていた。
「これ…、僕のために…?」
サチは小さくうなずいた。
外を出歩くのもままならないのにサチは僕のために…
すごく嬉しかった。
「ありがとう。すげぇ嬉しい」
サチは照れくさそうに顔を隠した。
「帰ろう…」
サチはやっぱり首を振った。
「なんで…?僕にはサチが必要なんだ」
「…………」
「な。手ぇ貸して。まだフラフラするんだ」
サチは渋ったけれど、僕に手を貸してくれて、一緒に帰った。
よかった…。
翌日、僕はすっかり快復していた。
サチが買ってきてくれた薬と、何よりサチという存在が効いたみたいだ。
「おはよう。…もう大丈夫なのか?」