君の声

通りで男が大声をあげて、びっくりした。
…どうやら中年の女性とぶつかったようだ。


あ、あの人…




「大丈夫ですか?」

「ええ…。あら…」

「…こんにちは」

「こん…やだ、私ったらみっともないところを…」



この人が…私を生んでくれたお母さん…




帰り道が同じだというので、2人で歩いた。

…なんだか意識して、何をしゃべったらいいか、わからなかった。



「…きょ、…今日は私何も落としてませんでした!?」

「うん、大丈夫よ」

「ははっ、よかった…」



…話が終わってしまった。





「…じゃ、私こっちなんで」

「あら、そっちだった?」

「私…家を出たんです。…もうあの家には帰りません」

「ええ!?」


「サチっ!」


タカが血相を変えて走って来た。


「タカ!どうしたの!?」

「それはこっちが言う言葉だよ!いきなり男の怒鳴り声が聞こえてきて、電話は途切れるし……あ」

「ごめんなさいね、怒鳴られたのは私。サチ…さんは心配して私の所に来てくれたのよ」

「なん…、そっか…。あー…よかった、無事で…」

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