君の声
終始笑顔だったけれど、少なからず負い目はあったと思う…。
帰り道、僕とおばちゃんは並んで歩いた。
サチは僕の後ろからついてきた。
…泣いてたんだ。
「それじゃ、私あそこのアパートだから」
「いつかまた食事に行きましょうね」
「ええ…」
サチはまだ僕の後ろに隠れていた。
おばちゃんは気付き、本当のことを話したのか?と、僕に目で問い掛けていた。
僕はそっとうなずいた。
「サチさん…、ごめんなさいね……」
サチは顔を出さなかった。
「…じゃ、またね」
おばちゃんは帰ろうとした。
サチは顔を出した。
「あ…ありがとう!生んでくれて……。私、今すごく幸せだから…、だから……」
おばちゃんは立ち止まって、ゆっくり振り向いた。
そして、目を潤ませながら笑って、帰っていった。
僕らは、だんだん小さくなっていくおばちゃんの後ろ姿を、見えなくなるまでずっと見送った。
「…今度会った時にはお母さんって呼ぼ」
「そうだな、僕もそう呼ぼう」