君の声
3月末、サチは大学を卒業する。
「僕も行くよ。サチの保護者として」
「ええ?じゃ、お願いします、お父さん」
「おう、任せなさい」
なんて言って、僕もサチの卒業式についていった。
「うっ……、うっ……」
「…なんでタカが泣いてるの?」
「だってさ…卒業…式だぜ…。よく頑張ったなぁ、サチ…」
「ははは…、へんなタカ…」
泣き合っている僕らの姿を見ている2人に僕は気付いた。
椎葉のご両親だ…。
来てくれたんだ…。
ご両親は遠くから僕らを見ていたたけで、何も言わずに帰っていった。
「あー、終わった。…勉強ばっかりさせられてたからいい思い出なんてひとつもないや。友達も出来なかったし…」
「…椎葉のご両親、来てくれてたよ」
「…うん、わかった…」
「…挨拶に行こうか」
「……でも」
「行こう!」
サチの足取りは重かったけど、サチの手を引き、僕らは椎葉家を訪れた。
「ああ…、22年も暮らした家とは思えないくらい緊張する…。やっぱりやめよ?」