君の声
「ごめんなさい、お嬢様…。私ずっと見て見ぬ振りをしていました…」
「知っての通り…、私どもはおまえと血のつながりはない。だけどな、私たちはおまえを本当の娘のように思っておった。…見栄や世間体も確かにあったが、それ以上におまえがかわいかった…」
僕たちは胸がいっぱいで、今にも涙が溢れそうだった。
「草野くん。娘を助けてくれてありがとう。それから、娘をよろしくお願いします」
「…はい!」
「あおい、卒業おめでとう。よく頑張った」
「ありがとうございまっ……」
もうだめだ……
「…ほら、泣いてないで!今日はお祝いなんだからごちそう食べていきなさい。田中さん、用意してくれる?」
「はい!かしこまりました」
その夜は僕も仲間に入れてもらい、家族で和気あいあいと過ごした。
こういうのはたぶん、サチも22年間で初めてだったのではないだろうか。
帰り際、母親がサチを抱きしめた。
「…こうしてあなたを抱きしめることも今までなかったわね」
「…………」