君の声
「だって……」
「あっ!おい、どこ行くんだよっ…」
サチは飛び出て行った…。
なんでこんなことになったんだ…!?
―カチッ、カチッ、カチッ……
部屋は時計の針だけが鳴り響いていた。
サチが出て行って3時間も経ってしまっていた。
…すぐ戻って来ると、高を括っていた。
僕は心配になって、探しに出た。
「サチー…」
椎葉の家にも生みの母親の所にも行っていなかった…。
寒空にサチはどこへ行ってしまったんだ…。
そういえば、サチと出会ったのはちょうどこんな季節だった。
ここの人込みの中で…
「いた…。サチ!」
あの日と同じ所にサチはいた。
あの日と同じようにサチは逃げた。
「サチ!待てよ!」
「やっ、離してよ!」
「離さない!」
僕は力一杯サチをつかまえていた。
「…………」
「…体、冷えきってるじゃないか」
「…………」
「…どうしたの?」