君の声
「それは…、詳しくはわからないけど、とにかくつらいことがあったんだよ、だから…」
「俺には、そういう人間は世の中や自分から逃げているだけとしか思えない。タカがなんであんな女を捕まえたのかもわかんねぇよ。犬や猫じゃないんだぞ」
「ノブにはわからなくていいって言ってるだろ!」
「俺はおまえのためを思って…」
これ以上話しているとノブを殴りそうだったから、そう言い払って帰った。
高校から10年来の親友だったが、もう、あいつとは付き合えないかもしれない…。
「ただいま」
僕は帰る早々サチを強く抱きしめた。
「………?」
「ごめん…。汗臭いよな…」
“ううん”
「…腹減ったろ。ここんとこあまり食べてないだろ。特上ロースを買ってきた。焼肉にしようか」
「…………」
「…サチ?」
サチは…、また泣き出してしまった。
「サチ、大丈夫だよ。サチはすごく頑張ってくれた。サチがいてくれたから僕はまた元気になれたんだ」
“どうしてそんなに優しいの…?”
タカにみつけてもらって、私はずっと、タカに甘えていた。