君の声
「…出張?…ですか?」
「ああ、急で悪いんだけど、たったの2日だから頼むよ」
「…無理です」
「そんなこと言わずにさぁ、他に誰もいないんだよ」
「サチにだって僕しか…」
「え?」
「あ…、いや、何でもないです…」
「なぁ頼むよー、社運がかかってるんだよ…」
「…………」
結局断ることができなかった…。
いつもならともかく、今サチは寝込んでいる…。
なんでこんな時に限って…。
「…そういうわけなんだけど、サチ、大丈夫か?」
“うん、大丈夫だよ。行ってきて”
「はぁ…、ごめんな。僕が寝込んだ時は看病してもらっといてな…。でも、心配だなぁ…」
“大丈夫だってば!”
「会社の女の子に様子を見に来てもらうように頼もうか?」
“いい、いい!そんなのやめて!”
「だってさ、もし何かあったりしたら…」
“何もないよ!もう、心配性なんだから…”
「長居はさせないからさ。こう、様子だけ…」
“…わかったよー。それでタカが安心してお仕事ができるなら…”
僕はこの時、自分が安心するためだけにこう提案し、サチが苦痛になることを忘れていた…。