君の声
このことで男に対して恐怖心が芽生え、もしかしたら僕のことも恐がるかもしれないと、思ったけど…、堪らずに泣いてるサチを抱きしめた。
サチは…恐がらずに僕の胸に顔を埋め、破れるくらい強くシャツを掴み、泣き続けた。
体は震えていた…。
「もう絶対ひとりになんかしない…、僕がついてるからな…!」
サチには僕しかいないんだ…。
「んんっ、お取り込み中失礼!」
警察の人が来た。
でも僕たちは離れなかった。
「色々聞いておかないといけないのでね。まず、サチさんの名字を…」
「えっ…と、…まぁいいじゃないですか!」
「そういうわけにはいかんでしょう。被害届にも書かないと」
「草野…、草野サチです!」
「草野って、ご夫婦だったんですか?」
「はい。もうすぐ…」
「もうすぐ?ということは今はまだ違うんですね。今は何という名字ですか、サチさん?」
「…………」
サチはおどおどしていた。
「何か言えない理由があるんですか?」
「サチは…、サチという名前は僕がつけました」