君の声
「…どういうことですか!?」
どうなるか恐かったけど、本当のことを話した…。
「…じゃあ彼女の本当の名前や出身地は」
「知りません…」
「困りましたね。…こちらで彼女のことを調べてもよろしいですか?」
サチはつらそうな表情をしていた。
「だめです。そんなこと…、誰にだって知られなくない過去があります!」
「しかし身元不明のままでは…」
「サチはもうサチなんです!きっと何かすごくつらいことがあって、ショックで言葉も失ってしまったと思うんです…。つらい過去を掘り出しても余計つらくなるだけです!」
「…そうですね。今日のところはこれで失礼します。被害届のことなどまた後ほど」
サチを守りたい一心で、つい興奮してしまい、今話しても埒が明かないと思ったのか、警察の人は帰っていった。
サチの具合も快復し、病院をあとにした。
サチは僕の腕をがっちり掴み、うつむきながら歩いていた。
僕もしっかりとサチをつかまえて歩いた。
―ぷるるるる…