君の声
会社から電話が入った。
「―はい。わかりました。申し訳ありませんでした」
あっさりと解雇された。
あんな騒ぎを起こしたのだから当然か…。
「…?」
サチが心配そうに僕を見ていた。
「大丈夫だよ。これからしばらくは昼間もずっとサチと一緒にいられる」
“ごめんね…、私のために…”
サチは悲しそうな顔をした…。
「喜べよ、僕は嬉しいよ。な、笑って。変な顔攻撃~、ぐにょぐにょ~」
サチは笑わなかった。
「ごめん…。そんな気分じゃないよな…」
僕だって本当はまだ笑いたくなんかない…。
この日はうちには帰らずにホテルに泊まった。
うちに帰ると思い出してしまう…。
サチは夜景を眺めていた。
「綺麗だね」
“うん…”
ずっと、ずっと眺めていた。
僕はそんなサチを眺めていた。
…思い出したくないのに、ノブの言葉が頭を駆け巡っていた。
そして想像したくもないのに…
あいつはサチの声を聞いたのか…?