君の声

僕はサチの心の声が聞こえる。それでいいと、ずっと思っている。
だけど…

なんか気持ちがぐちゃぐちゃになっていた。



頭を抱えていると、サチが僕の顔をのぞきこんだ。


“ぐにょ~”

「ぷっ…」

“ぐにょぐにょ~”

「ははっ、やめろよ、顔がゆがんじゃうよ」

“ぐにょぐにょ~”


サチは僕を笑わせようと必死だった。


“こちょこちょ…”

「ははは…、わかったからもうやめろぉ…!」



一番傷付いているのはサチなのに、僕の方が励まされてしまった。



「サチ、愛してる」

「…………」


サチは口をもごもごさせていた。
僕の気持ちに応えようと…
声を出そうとしている。
必死で頑張っている。…だけど、やっぱり声は出ない。



「無理しなくていい。気持ちはちゃんと伝わってくるから…。サチが無理しなくていい日がくるの待ってるから」




―苦しい…。

タカのこと、こんなに愛してるのに、私は「愛してる」さえも言えない…。

タカは私が言わなくても何でもわかってくれるけど…
やっぱり「愛してる」くらい声に出して言いたい…。

言いたいよ…


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