君の声
諦めて帰ろうとすると、一人の警官がやってきた。
「…私が教えたって言わないでくださいよ」
こっそりそう言って住所の書かれた紙を渡してくれた。
嬉しかった…。
僕はその人に小声でお礼を言い、早速サチのところへ向かった。
住所は隣りの県だった。
「…ここか?」
辿り着いたところは、すごい豪邸だった。
サチは金持ちのお嬢さん…だったのか。
インターホンを押すのに緊張して指が震えていた。
『はーい、どちら様でございますか?』
「あっ…、く、草野隆義という者ですけど、サ…、あおいさんはいらっしゃいますか?」
―プツッ
…切られた。
拒絶されたということか…。
僕は門の前で立ちすくんでいた。
ここまで来て引き下がるわけにはいかない…。
サチに会いたい!
家の周りを一周した。
どこかにサチの影は…
「諦めて帰ったみたいですね」
「あら、根性ないのねぇ」
たった一周がすごい疲れた…。
でかすぎる…。
僕はまた門の前に立った。