君の声
「もしかしたらサチもそうなんじゃないかって思って、しつこく追っかけ回したんだ。ごめんな、怖がらせて…」
「ううん…」
「でも僕と一緒にしちゃ悪いな。サチにはちゃんと親がいるんだしな」
「一緒だよ。私、養女だもん。子供が出来ないあの人たちが見栄のために私を預かったのよ。私も本当の親のことは知らない」
「そう…なのか…」
僕たちは明け方まで話して、疲れ果てて、でも安心してぐっすりと眠った。
追っ手が来ることなど考えずに…
その日の夕方、僕たちはまだ眠っていた。
「草野さーん」
「ん………?」
誰か来た。
聞いたことのある声…
警察の人だと、すぐわかった。
きっとサチのことだ…。
「いないんですかぁ?」
やっと僕のところに戻ってきてくれたサチを、また奪われそうで…
居留守をつかった。
出て、ここにはいない、と嘘を吐く自信がなかった。
寝起きで頭が回らないし…、サチはここにいる。
嬉しすぎて嘘なんか…
もうサチと離れたくない。
「…………」