君の声
「からあげちょうだい?」
「いいよ…」
「わーい。サチちゃんのからあげおいしいよ!」
「ありがとう……。ごちそうさまでした……」
「あら、ほとんど食べてないじゃない…」
サチは…
サチの中で何かが崩れそうになっていた。
前はそんなサチの気持ちを的確なほどに読み取れていたのに…
その夜も僕はバイトに行ってしまった。
僕はお金を貯めて、サチと逃げることしか考えていなかった…。
それが1番いいと…
バイトを終え、夜中帰ると…
サチは部屋に居なかった。
「サチ…!」
園内や周辺を探し回ったが、サチはどこにも居なかった…。
「隆義くん、おはよう。サチさんはまだ寝てるの?朝食がまだできてないのよ」
「サチ…、居ないんです。どこにも……」
「え!?よく探したの?トイレは?」
「…………」
「そう…。サチさん…、ゆうべ遅くに電話で誰かと話していたわ。何かもめてるような様子だった…。ごめんなさいね、私がしっかり見ていれば…。探しましょう、みんなで」