君の声
通りの向こうにサチに似た人が歩いて行くのが見えた。
僕は思わず追いかけた。
「サチ!」
「隆義さん!どこに行くんですか!?」
杏香さんのことは、もう僕の頭にはなかった。
サチ…に似たあの人を追うのに必死だった。
そして、その人の近くまで辿り着いた。
「サチ!…やっぱりサチだ!」
「隆義さん!どうしたんですか!?…きゃあっ!」
追って来た杏香さんが転んだ。
「…助けてあげたらどうですか?」
「…サチ!」
「私はサチじゃありません。人違いです」
「あ、ちょっと待っ…」
「痛っ……」
後ろで杏香さんが痛がっているのにやっと気付いた。
「…大丈夫?」
「うん…。でもジュースが…」
サチは行ってしまった。
人違いなんかじゃなかった。
あの人がしていたペンダントは僕が出会った頃サチに贈ったものだった。
サチだった…。
でもどうして人違いだなんて…。
「…知ってる人だったんですか?」
「…………」
「…隆義さん?」
「あの人は…、僕が愛する人だ」