君の声
「それはないと思いますよ。あの方、ずっとお嬢様のことお探しのようで…」
「ここには帰ってきていないって、言いなさい!あおいはもう、この前までのあおいじゃないのだから」
ああ…、大きな家だ。
サチはここで、声が出なくなるくらいつらい思いをした…。
思うと涙が出そうだった…。
家には戻っていないのか…?
でもそれなら、どこにいるか、僕に問い詰めるはず…。
やっぱり家に戻っているんだ。
僕は身を潜めて待った。
サチが帰ってくるか、家から出てくるか…
サチに、会いたい…
「…………」
―タカ…
ここまで来ちゃったの…。
こんな寒い日に、こんな所で寝たら凍死しちゃうよ…。
タカ……
―サチ…
会いたい…
「ふ…、ふぁっくしょい!あー…寝てしまったのか…。……あれ?」
いつの間にか眠っていた僕に、白いコートがかけられていた。
「………サチ?」
サチの香りがした。
サチが僕にこれを…!?
「サチ!!」
僕はもう一度インターホンをならした。