君の声
どうして…
どうしてそんなこと言うんだ…?
「娘もこう言ってる。早く帰りなさい!」
わけがわからないのとショックで…
頭がぼーっとしていた。
「いつまで突っ立っているんだ、早く帰れ!」
父親は僕を押し、玄関を閉めた。
僕はそのまましばらく動けなかった。
凍えそうな風…
今年初めての雪まで降ってきた。
ただコートを抱いていた僕の腕だけがあたたかくて…
あんなに心が通じ合えていたのに…
今の僕はもう何も聞こえなくなっていた…。
だけど…、何かきっと理由があるんだ。
サチは居眠りしていた僕にコートをかけてくれた。
僕に愛想つかしたわけじゃないはず…。
そう信じて、僕はコートを持って、帰った。
「サチ…、ありがとう」
「まったく、なんてしつこい男だ!こんな時間にあんな大声で…非常識にも程がある!もうあんな男を相手にするんじゃないぞ!」
「…はい」
「ひとりで歩くのは危ないな。明日からガードマンをつけよう。これで行き帰り安心だ!」
「…はい」