君の声
「まぁー、ありがとうございます!とても大事なものが入ってたんです…、助かりました!」
「しっかり抱いておいてくださいね。じゃ」
「ああ、待って!お名前は…」
「…いえ、大したことないですから」
被害者は小柄で可愛らしいおばちゃんだった。
…僕の母親もこんな感じなのかなって、このくらいの年齢の人を見るといつも思う。
別に、母親を探そうとは思わないけど。
小さな僕を捨てた親なんか…。
そのおばちゃんと数日後の休日、またバッタリ会った。
どうしてもこの間のお礼がしたいと、半ば強引に食事に誘われた。
「あのバッグにはね、本当に大切なものが入ってたのよ。…私、生き別れになった子供がいてね、ずっとその子のことを探しているの。バッグの中に、その子の手掛かりになるんじゃないかというものがあるの」
…まさか
おばちゃんは、その子の生まれたばかりの写真を見せてくれた。
…女の子だった。
…一瞬、期待してしまった自分がいた。
「ほら、腕のところにホクロが連なっているでしょ。めずらしいからこれが手掛かりになるんじゃないかってね」