君の声
「…今回だけですよ。私だって怒られるんですから」
「ありがとう!」
話のわかるガードマンでよかった…。
「どちらへ行かれてたのです?」
「え…、ちょっと極秘取材に!が…学校から…ね!」
「…?」
…下手な嘘を吐いてしまった…。
「あ、あの、もうひとりでも大丈夫なんだけど!」
「いいえ。ここのところ少し怪しい人を毎日見掛けております」
「えっ?…どんな人!?」
「中年の女性です。隠れているつもりでしょうが、よくお嬢様のことを睨んでいるのを見掛けます」
「…うそ、…気のせいじゃ?」
「いいえ。あの人は怪しいです。私はだてにこの職業をやっているわけではありません」
大きな体のガードマンは、辺りを気にして、過剰にキョロキョロしていた。
…こっちの方がよほど怪しい気もするけど。
ある日の帰り道、ガードマンはお腹が痛いと、トイレまで私を連れて行こうとした。
「外で待ってます!」
「だめです~!はっ早く来て下さいよっ!…もぉ~!!」
「…やだっ!」
「おっ、お嬢様!待ってくだ……ああ~!!」
逃げてしまった。