君の声
サチと出会ってからのこと、それ以前の僕が知ってること…
おばちゃんに全部話した。
…おばちゃんの目から涙がこぼれた。
「私があの時あの子をしっかり抱いておけば…。あの子は本当のこと知らないんでしょうね…」
「知ってます。声が出るようになってから話してくれました。…だからおばちゃんがサチのお母さんだってピンときたんです」
「そう…。どうにか…、何かしてあげられることはないのかしら…。私は椎葉さんのようにお金持ちでもないし…」
どうしたらいいのか僕にもわからなかった…。
「…やっぱり似てますね」
「え?」
「サチと似てます。顔…」
「…そう。ありがとう」
おばちゃんに笑顔がこぼれた。
―カチャッ
「ただいま、サチ」
僕は相変わらず、サチがあの日僕にかけてくれた白いコートに話しかけている。
「サチ、君を産んでくれたお母さんと食事に行ってたんだ」
なんだかサチが聞いてくれてるようた気がしていた。
「サチ…、会いに行ったらだめか?」