君の声
ノブもあの事件以来、定職に就けていないようだ。
僕らはしばらくぶりに一緒に食事をした。
「彼女とは仲良くやってんの?」
「ん?別れた」
「え?この前できたってわざわざ電話くれたばかりじゃないか」
「そうだっけ?はっはっはっ、そんなこともう忘れた!」
―ぷるるる…
「あ、サチだ。はい――うん、大丈夫。サチはきのう大丈夫だった?――そうか、ははは…」
考えてみると、電話でサチと話すのはこれが初めてだった。
楽しくてつい、時間を忘れた。
「ははは…――うん。じゃあまたな」
「んんんっ、すごく楽しそうでしたね。俺コーヒーこれ6杯目」
「ああ、ごめん。つい…」
「いいよ。おごってくれたら許す」
「わかったよ…」
彼女と別れたばかりのノブの前で、無神経だったかと…反省した。
「なぁ。杏香ちゃんどこにいるか知ってる?」
「知らない…けど」
「病院」
「え?」
「おまえにフラれたショックで酒飲みまくってアル中になったんだってよ」
「そんな…」