君の声
「いいえ、本人に手渡しとなっておりますので。えっと…椎葉あおいさんですね」
「手渡し?そういうのがあるんですか?」
「ええ、あるんですよ。あおいさんは居られますか?」
「お嬢様はもうずっとアメリカの方へ留学なさってるんですよ。…荷物は何ですか?」
「そうなんですか!それじゃこれはアメリカの方へ。失礼します!」
「あ、ちょっと…!…何なのかしら?」
さっき娘はいないって言ってたじゃねぇか。
…やっぱりヘンだ。
「こんにちは。私、あおいさんの教授の作田という者ですが」
「まぁ!お嬢様の?どうぞ中へ」
「いいえ、ここで。あおいさん…欠席されてるようですが…」
「ええ、ちょっと体調を崩しておりまして。学校の方には連絡致しましたが…」
「そうですか!いえ、私今日パリから帰ってきたばかりでして存じませんでした。それではあおいさんに会うことは…?」
「ちょっと無理ですねぇ、熱が40度もあって絶対安静とお医者様に…」
「それは大変だ、それではどうぞ大事にして下さいとお伝え願いますか、どうもおじゃましました」