君の声
「すみません…」
「理由を聞いているんだ」
「す、すみません…。初めて会った時、街の人込の中でサチはひとり怯えてたんです。…なんかほっとけなくて、サチを自分の家に連れて帰って…」
「なんだと!?やっぱり誘拐じゃないのか!?え!?」
「すみません…!でも誘拐じゃないです!…ないと思います!」
「……それで、なぜ?」
「…当時サチは声を出せなかったし、心を閉ざしていたので名前も何もわからなくて…で、勝手にサチって付けてしまった…んです。すみません、未だにそう呼んじゃって…」
「どうして…、幸せという意味か?」
「はい…、まぁ、そうですね…。すみません…」
「いちいち謝るな!何か悪いことをしたのか!?」
「し、してません!すみませんっ…あ…」
父親のこの威圧感に、どうしても「すみません」という言葉が出てくる…。
「…いい名じゃないか」
「す…、ありがとうございます………」
僕の額から冷や汗がダラダラこぼれてきた…。
「あおいは…声を出せなくなるくらい苦しんでいたのか…、私は…気付きもしなかった…」
「…………」