君の声
「すみませんね、病室が足りないんですよ。具合が悪くなったらまた来てください」
僕らは追い出されるように、病院をあとにした。
ま、いっか。
「どこか遊び行きたいけど、ちゃんと帰らないと怒られるかもな」
「帰りたくないよ…」
僕も帰したくなかった。
けれど、あの日「頼む」と言ってくれた父親を裏切るような気がして…
「…帰ろ。ちゃんと認めてもらえるまで話そう」
渋々…帰った。
「おかえりなさいませ!奥の部屋でご主人様がお待ちです。草野さんもどうぞご一緒に」
「僕も…?」
追い返されるかと思っていたから意外だった。
追い返されても強引にあがるつもりだったけど。
奥の部屋には、父親がひとり座っていた。
僕らはビクビクしながら入っていった。
「…ただいま」
「…おじゃまします」
父親は黙って目を閉じていた。
…怒っているのか。
「…………」
「…………」
沈黙が続いた。
僕らの緊張は頂点をはるかに超えていた。
「……あの」