君の声

「はい…」



はい…って、つい返事してしまった…。





「…………」

「…おいしい」

「…よかったら私のも食べて。食欲ない…」


サチは涙が止まらないようだった…。






「お嬢様、どちらへ!?」

「お父さんが好きにしなさいって。私は…ここの子じゃないもの。ここに居たらいけない…」

「そんなことないですよ!ご主人様はきっと、そういう意味でおっしゃったんじゃない…」

「田中さん、小さい頃からずっとお世話になりました。さようなら」

「お嬢様っ…!」

サチは走って玄関を出た。


「あ…、落ち着いたら連絡します。心配しないでください」

「そんな…」



僕らは椎葉家をあとにした。
夜食までもらって、結構長居したけど、母親は一度も姿を現さなかった。






「サチ、待って!」

「あはははは!私また捨てられた。産みの親だけでなく育ての親にも!」

「サチ、おばちゃんはサチを捨てたわけじゃ…」

「同じよ!どうして私をしっかり掴まえておかなかったの!?」

< 99 / 112 >

この作品をシェア

pagetop