君の声
「はい…」
はい…って、つい返事してしまった…。
「…………」
「…おいしい」
「…よかったら私のも食べて。食欲ない…」
サチは涙が止まらないようだった…。
「お嬢様、どちらへ!?」
「お父さんが好きにしなさいって。私は…ここの子じゃないもの。ここに居たらいけない…」
「そんなことないですよ!ご主人様はきっと、そういう意味でおっしゃったんじゃない…」
「田中さん、小さい頃からずっとお世話になりました。さようなら」
「お嬢様っ…!」
サチは走って玄関を出た。
「あ…、落ち着いたら連絡します。心配しないでください」
「そんな…」
僕らは椎葉家をあとにした。
夜食までもらって、結構長居したけど、母親は一度も姿を現さなかった。
「サチ、待って!」
「あはははは!私また捨てられた。産みの親だけでなく育ての親にも!」
「サチ、おばちゃんはサチを捨てたわけじゃ…」
「同じよ!どうして私をしっかり掴まえておかなかったの!?」