まだ、君を愛してる.doc
「なぁ、この後どうする?」
気がつけば、そろそろ予約の時間は、終わる頃合いになっていた。さっき店員が来たのは、ラストオーダーを確認するためだったのだ。
「どうするか・・・」
酔いのせいで、えりの勢いは加速していた。いきない大きく手を上げ言った。
「私、有くんと二人っきりになりたい。」
「えっ・・・」
三人は止まった。なぜなら、発言と同時に、えりは有くんに抱きつき、それだけならまだしも、いきなりのキス。こうして生で他人のキスを、それも親友のキスを見るなどとは、夢にも思わなかった。
ただ、キスを見たのは愛花、彼女もだった。これはある種、僕にとっていい方向に働いた。少なからずそれを意識してしまい、また、自分の中にある欲求を留めている鍵を、僅かではあるが外し、また、えりが二人っきりになりたいと言う要求を叶えるのが、自分にとっても好都合だと考えてもらえるに至ったからだ。
「わ、わかったよ、えり。じゃ、このお店出たら別行動にしよう。」
「さすが愛花、わかってるなぁ。」
「えっ、いいの?」
愛花の答えが相当意外だったらしく、有くんは愛花に聞いた。
「いいとか、悪いとかじゃなくて。えりがこうなったら、頑として聞かないから。それより、えりの事よろしくお願いします。」
まるで、母親のように愛花は頭を下げた。
「あ、うん、わかった。」
こうして僕と愛花は二人で店を出た。
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