まだ、君を愛してる.doc
「みりちゃーん、今日も来たよ。それも今日は東京からのお客さんも連れてだ。」
「本当に?ありがとうございます。」
状況を理解したのか、そこからは何事もなかったかのように、彼女は振る舞いはじめた。
「こちらの席へどうぞ。」
店の奥のソファへと腰掛ける。どうやら客のグレードにより席が変わるようだ。暗いから気をつけて見ないとわからないが、奥に行くほどソファなどが良くなっている。少しでも居心地を良くしてと考えた結果だろう。
「じゃ、俺はみりちゃんの隣で。」
僕が一番奥、その次にみり、そして角田部長、最後に入り口で案内してくれた女、その順番に座った。
「ははは・・・。両手に華だな。」
「それ、いつも言ってるぅ。」
「そうだったか?」
まだ、一滴も飲んでいないのにご機嫌だ。
「じゃ、いつものようによろしくな。」
「はーい。」
角田部長はみりが気に入っているようだが、角田部長の事を気に入っているのは、案内してくれた女の方だった。それもあり、事ある毎に大胆に、巧みに迫ってくる。
男としてはこの手の誘いに勝てるはずもなく、グラス一杯飲み干した時には、見事なまでに陥落していた。
「ははは・・・。ゆなちゃーん。」
抱きついていた。
「いつも、こうなの?」
みりに僕は耳打ちした。すると、同じように耳打ちしかえしてきた。が、それは僕の質問に対する答えじゃなく、いったいどんな意味なのか理解し難い、そんな答えだった。
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