まだ、君を愛してる.doc
「私がこんな仕事してて、嫌だった?」
「?」
しばし考えるが、彼女の事をよく知らないから、何を言っているやらさっぱりだ。
「どう言う事?」
「そのままだよ。嫌だった?」
「あ、嫌じゃないよ。」
「良かった。」
彼女は笑い、僕の肩に頭をもたげた。
そうしている間も、角田部長は抱きついたままだ。僕たちの空間に、一歩たりとも踏み込んでこない。席こそ一緒だが、二人きりと同義になっていた。
「で、さっきの質問。いつもこうなの?」
「うん、それでたまにお持ち帰りしちゃうの。」
「お持ち帰りって、こう言う店で?」
「そうだよ、角田さん、会社の経費使ってくれるから、とってもいいお客さんだもん。少しくらい、構わないよ。」
「そう言うもんなんだ・・・」
自分の概念にない回答。それに戸惑いを覚えた。
「うん、こう言う店にいるって、それなりにみんなあるからね。少しでも上を目指せるなら構わないって思う・・・」
「そっか。」
何か寂しい。理由は分からない。けど、こう胸に穴が開いたような感覚は拭えず、冷たい風が寂しくさせる。
「だからさ、今日、部屋に行っていい?」
「どう言う事?」
「どう言うって、女に言わせるかな?言わなくてもわかるでしょ?」
「えっ?!」
僕は東京から来ている。つまり、この店に来るのは今回だけ、の可能性が高い。高いどころか、それしかないだろう。つまり、彼女が僕に言う理由が見当たらない。
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