まだ、君を愛してる.doc
「ただいま。」
いつものように玄関を開けた。が、様子がおかしい。空気が纏わりつく感じ、これはなんだかわからないが、嫌悪感を抱く感じだ。
電気もついていない。今日、愛花がどこかに行くとは聞いていない。まして、水曜日、会社で飲み会でもないだろう。そもそも、そうだとするなら、メールの一つもあってもいい。
「愛花?」
とりあえず、リビングの電気を点ける。すると、部屋の隅に愛花がうずくまっていた。
「どうした?調子悪いのか?」
「・・・さない。」
「ん?」
「許さない・・・」
「許さない?何を?」
「とぼけるの?」
「だから、何を?」
「これ、何?」
愛花が出したのは、みりからのメッセージカードだ。けど、さっきも言ったように、僕はそれを知らなかった。
「なんだ、これ?」
手に取り言った。
「何それ?知らないなんて言わせないよ。」
とぼけている訳ではない。知らなかったのだから、普通の反応。しかし、それが愛花には、とぼけているようにしか見えず、彼女の怒りを増大させた。
立ち上がり、僕の前に来るなり、いきなりのビンタ。それも一度ではない。二度、三度と繰り返された。
「ちょ、ちょっと。」
愛花の手首を掴み、これ以上されないように止めた。
「放してよ!」
右手を左右に大きく動かし、彼女は逃れようとした。しかし、放さない。今、両頬がヒリヒリしている。おそらくだけれど、指輪がうまい具合に当たり、口の中を切ったようだ。鉄の味が耐えないのは、そのせいだ。
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