まだ、君を愛してる.doc
「はぁ?なんだ、それ。」
「なんだ、それって、自分のした事を悪いと思ってないから、そんな風に言うんじゃないの?」
「愛花、お前は鞄を勝手に開けた事、それは悪い事だって思わないの?」
「さっきから言ってる。うちでは普通。」
根本的な価値観が違う。宗教戦争だ。戒律の違いってやつはどこまでいっても、分かり合うものではなく、それが続けば続くほど、溝は深まっていく。
「だから、何が普通なんだよ。お前の親、おかしいんじゃないか?」
そう言い終わるか、言い終わらないうちに、僕はもう一度ビンタを喰らった。
「自分が悪いくせにさ、親の事、悪く言わないでよ。」
「な・・・。なんだ、これ?」
理解の範疇を超えた行動。僕たちが結婚したのは、こんな理解の範疇を超える事がない、互いが互いをよくわかっている、そんな関係だったからこそだと思っていた。
それだけに、今、自分が置かれている状況、それは実に奇異であり、僕の中ではあってはならないものだった。
“夢?”
ある種の夢、そうすら思えてくる。あと少しすれば、朝日がまぶたを抜け、薄ら明るいそれが、僕を目覚めさせてくれる。そう思い出した。
「・・・」
何も言わず、僕は家を出た。そして、車に乗り高速へ。いつまでも、いつまでも走り続けた。結果わかった事。朝日は僕の目の前に昇った。眩しすぎて、思わず、サングラスを掛けた。これの意味。そう、愛花との一件は夢ではなく現実。それを無情に語っていた。
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