まだ、君を愛してる.doc
鍵を開ける。自分の家の鍵なのに、感触がおかしい。例えて言うなら、どこか見知らぬ家にピッキングでもしているような、反道徳的な行為に似ている気がする。鍵が掛かっていても、中に人がいると、どこか温かみを家は醸し出している。その雰囲気に慣れきっていた僕は、気配の違いを感じ取ったのだ。
「・・・」
暗い。地下鉄の窓の外と同じ。いや、それ以上に飲み込まれそうな黒が広がっている。靴を脱ぎ一歩踏み入れるだけで、冥府に浚われそうだ。
「・・・ただいま。」
玄関に飾ったパキラに言った。しかし、観葉植物が返事をする訳でもなく、逆に虚しさが募るだけだった。
「お前さんも何か話せればいいのにな。」
ちょんと軽く葉をつついた。
一人暮らし。期せずして、する事になった一人暮らしは、大学の新入生などとは違い、何ら前向きなものはなく、淡々と繰り返しを行うだけなのだと、無気力な僕に対して嫌がらせをしているとしか思えなかった。
「飯、作るか・・・」
人は腹が減る。腹が減ったら飯を食う。そんな当たり前な行動が多くの人を支配しているはずだが、僕はその支配から逃れたようだ。正直、腹が減ると言った感覚もなくなったし、それだから食べると言う感覚も消失している。“飯を作らなきゃ”と言うのは、単なる条件反射。“しばらくの間、実家に帰る”と言った愛花、その愛花が作ってくれていた食事、その食事の時間が今くらいだったから、そうしているに過ぎなかった。
「何にするか。」
床に置いたスーパーの袋に手を入れる。何が出てくるかは、お楽しみだ。この袋の中には、おおよそ一月分くらいのレトルト食品が入っている。牛丼、親子丼、中華丼にカレー、よりどりみどりだ。僕はこれを繰り返し食べる。
「中華丼か・・・」
ため息が出た。なぜなら、この生活になるまで、まるで口にする事はなかったので知らなくてもしょうがないのだが、中華丼のレトルトだけは電子レンジが使えない。理由は中にあるウズラの卵が爆発するからとの事だ。それがあるから、わざわざお湯を沸かし、その中に沈めなければならない。面倒くさい。だからこそのため息だった。
「・・・」
暗い。地下鉄の窓の外と同じ。いや、それ以上に飲み込まれそうな黒が広がっている。靴を脱ぎ一歩踏み入れるだけで、冥府に浚われそうだ。
「・・・ただいま。」
玄関に飾ったパキラに言った。しかし、観葉植物が返事をする訳でもなく、逆に虚しさが募るだけだった。
「お前さんも何か話せればいいのにな。」
ちょんと軽く葉をつついた。
一人暮らし。期せずして、する事になった一人暮らしは、大学の新入生などとは違い、何ら前向きなものはなく、淡々と繰り返しを行うだけなのだと、無気力な僕に対して嫌がらせをしているとしか思えなかった。
「飯、作るか・・・」
人は腹が減る。腹が減ったら飯を食う。そんな当たり前な行動が多くの人を支配しているはずだが、僕はその支配から逃れたようだ。正直、腹が減ると言った感覚もなくなったし、それだから食べると言う感覚も消失している。“飯を作らなきゃ”と言うのは、単なる条件反射。“しばらくの間、実家に帰る”と言った愛花、その愛花が作ってくれていた食事、その食事の時間が今くらいだったから、そうしているに過ぎなかった。
「何にするか。」
床に置いたスーパーの袋に手を入れる。何が出てくるかは、お楽しみだ。この袋の中には、おおよそ一月分くらいのレトルト食品が入っている。牛丼、親子丼、中華丼にカレー、よりどりみどりだ。僕はこれを繰り返し食べる。
「中華丼か・・・」
ため息が出た。なぜなら、この生活になるまで、まるで口にする事はなかったので知らなくてもしょうがないのだが、中華丼のレトルトだけは電子レンジが使えない。理由は中にあるウズラの卵が爆発するからとの事だ。それがあるから、わざわざお湯を沸かし、その中に沈めなければならない。面倒くさい。だからこそのため息だった。