まだ、君を愛してる.doc
「?」
「久保さんに相談した事あるんです。どうしても、自分の中に留めておけなくて。」
「何を?」
「なんか、こう言うのって、幾つになっても慣れないですね。」
「?」
「私が・・・課長を好きな事です・・・それを相談したんです。」
衝撃的な言葉が、目の前で揺れる。今まで隣にいて、かわいいとは思っていた。他の社員に対してよりも、なぜか僕に親切だとは思っていた。それの理由が明らかにされた。
「好き?それって、新島さんが僕を好きって事じゃないよね?」
「ううん、そうです。その通りです。好きなんです・・・」
「どう答えていいのか。」
「ダメ・・・ですか?」
「ダメと言うか。出て行ったと言っても、別に離婚したわけじゃないし。俗に言う別居ってやつだから。」
「えっ?!そうなんですか?!」
どうやら久保と彼女との会話では、僕は離婚したとなっていたらしい。それなら、彼女の突然の告白、それも納得出来る。が、僕が置かれている現実の前では、彼女の大切な言葉は意味をなさない。
「そうなんだ。だから、気持ちはうれしいけれど、新島さんのそれには応えられない。ごめん・・・」
パソコンの前で頭を下げた。
「・・・」
沈黙は続く。どれくらいの時間だろう。パソコンやゲームをしていると、時間が短く感じたりするが、そんな感覚の反対だ。多分、実際の時間にしたら一分くらい。でも僕には、きっと彼女にも途方もなく長い、長い時間に感じられた。
「仮の話してもいいですか?」
「構わないよ。」
「もしも、もしもです。課長が奥さんと離婚・・・離婚したら私と・・・ダメですか?」
「新島さんが仮の話をしているから、僕も仮の話として聞いて欲しい。正直、新島さんをかわいいと思っていた。だから、もし結婚していなかったら、付き合っていたと思う。ただ、離婚した時もそうなのか、それはわからない。」
頭が混乱しているのが、よくわかる。自分で何を言っているのか、状況を整理出来ず、思いのままを告げている。
「それだけど、新島さんに可能性がゼロかと言ったら、そうでもないと思う。ごめん、なんか支離滅裂な話してるね。」
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