まだ、君を愛してる.doc
「えっ?」
映っていたのは宅急便ではなかった。
「に、新島さん・・・。なんで?」
理由はわからない。けど、しつこく鳴らしているのは、彼女に間違いない。その証拠に僕が呆けた顔でモニターを見ている間にも、彼女がチャイムのボタンをしつこく押しているからだ。
「これって、出るまで止めないつもりだよな・・・」
通話ボタンを押した。
「はい。」
「あ、やっと出てくれた。開けてくださーい。」
「あ、いや、今、誰かに会いたい気分じゃないから。」
そう言って、通話ボタンをもう一度押した。
すると、再びなるチャイム。さすがにこれは耐えられない。
「わかった。わかったから。今、開けるよ。」
解錠ボタンを無理矢理押させられた。
彼女が玄関に来て再びのチャイム。もう、何度も鳴らしては欲しくない。だから、すぐに玄関に向かった。
「どうしたの?」
チェーンロックも外さず、玄関のドアを少し開けた。
「あれ、中に入れてくれないんですか?」
「いや、散らかってるから。用は何?」
「散らかっていても構わないですよ。中に入れてください。」
「いや、それは勘弁して欲しいなぁ。」
格好だってパジャマのままだし、ヒゲも髪型も整えていない。会社の僕を知っている彼女に、今の姿はとてもお見せできない。
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